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人と地球に誠実な仕事 [シリーズ]

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「印刷」を通じた社会貢献を実践する大川印刷

大川印刷は、1881年の創業以来今日に至るまで、一貫して「情報産業の中核として、信頼に応えるものづくりと、喜びを分かち合えるものづくりの実現」を基本理念として事業を展開している。環境・少子高齢化・福祉・医療・食の安全など様々な社会的課題に対し、印刷という仕事を通じてその解決に貢献していく会社、「ソーシャルプリンティングカンパニー」であることを目指す、同社代表取締役の大川氏にお話を伺った。

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「ソーシャルプリンティングカンパニー」を目指して

株式会社大川印刷が目指す「ソーシャルプリンティングカンパニー」とは、印刷会社としての従来の業務だけでなく、様々な社会的課題に対して印刷を通じて貢献していく会社のことである。例えば大川印刷では、エコマーク認定文具の購入推進や、リサイクルトナーの使用、古紙パルプが配合されたコピー用紙の使用等、グリーン購入に努めている。また配送はできるだけ段ボールを使用せず、再生可能なプラスチックコンテナを用いることで包装資材を削減することや、廃棄物削減や工場周辺の環境整備活動、CO2排出量削減等、様々な取り組みを実施している。

特に、違法伐採がなく適切に管理された森林の木材を原料とするFSC森林認証紙の利用においては、業界内でいち早く取り組み、2007年4月に国内で初めて医薬品の添付文書への利用を実現している。医薬品の文書は、文字がにじむことで生活者に誤読された場合に、重大な事故につながる可能性があることから、古紙やFSC森林認証紙の活用は非常に難しいとされ、高い技術が求められる。しかしながら大川印刷では、印刷会社としての社会的責任を果たすために、その壁を乗り越えることができた。


またCO2排出量削減の取り組みにおいては、2003年からの圧縮天然ガス車による配送や、2004年からのカーシェアリングによる営業活動等、環境意識の高い取り組みを従業員一丸となって実施してきている。



「印刷は手段であり、目的ではない。」
大川氏が先代社長から会社を引き継ぐ決心をしたのは17歳のころだった。当時は競合も増え始め、印刷業界は非常に苦しい状態だったという。
20代で社長に就任した大川氏は、自分の仕事はいかに競争に勝ち抜いていくかだと考え、とにかく仕事をするための営業回りを行う日々が続いていた。「自分がやりたいことは本当にこれでいいのだろうか」という苦悩を抱え、毎日奔走する日々だったという。そんな中、とある服飾デザイナーとの出会いが大川氏の考えを大きく変えるきっかけとなった。

当時、障がい者が参加するダンスパーティで着られる服はジャージなどが多く、介護者の視点によって作られていた。そうした状況を変えようと立ち上がり、洋服を通じて社会を変えたいと話す服飾デザイナーの言葉は、大川氏の考えに大きな示唆を与えた。それは、「印刷は手段であって、目的ではない」ということだった。こうして視覚障がい者に優しい印刷物を開発する等、ユニバーサルデザインにのめり込んでいった。

当時の大川氏は、横浜の青年会議所で、社会に山積する様々な課題をビジネスの手法を通じて解決する「社会企業家の調査研究」に取り組んでいたこともあり、印刷を通じて社会の課題を変えるということは、自身の目指していた方向性に合致したのだった。


環境だけでなく、人にも優しい企業を目指す
株式会社大川印刷が取り組む様々な活動は、環境保全に限ったことではない。例えば、業界に先駆けて石油系溶剤を全く使わないインキへの切り替えを実施した。

通常、印刷会社の工場は石油系溶剤を使用しているために強い刺激臭があるが、大川印刷の工場は一切臭わない。


働く人や印刷物を手にする人のアレルギーを無くすための取り組みだ。また、年齢の差や障がいの有無に関わらず、誰にとっても使いやすく見やすいメディア・印刷物の作成に取り組んでいる。こうした数々の取り組みが評価された結果、横浜市における「横浜型地域貢献企業認定制度の最上位認定」や「グリーン購入大賞」を受賞したり、環境と社会貢献と「志」のビジネス情報誌『オルタナ』が選ぶ「環境・CSR経営 世界ベスト企業77社」に取り上げられたりしている。


理念が導く様々な効果
ソーシャルプリンティングカンパニーを目指すことで様々なステークホルダーとの間に「良い循環」が生まれている。業界に先駆けて新しい挑戦をするためには社員の理解が必要であるが、大川印刷では社員が積極的にそこに参画している。

例えば、大川印刷の環境方針には「エコライン」という発想がある。これは、印刷から納品に至る過程において、環境に配慮し持続可能な循環型社会を形成していくために、エコ用紙〜エコ印刷〜エコ製本〜エコ配送を行う一連の流れを指すが、この言葉そのものは社員から生まれている。また、大川印刷のこうした確固たる理念と行動に惹かれて、取引を行う会社も少なくない。

現在の取引先のなかには、「印刷を行っている工場の社員がどのような理念を持って働いているかを知るために工場見学をしたい」という要望もあるという。こうした要望を喜んで受け入れ、実際の工場現場を見学できる点も大川印刷の大きな魅力であろう。
ソーシャルプリンティングカンパニーを目指す上での様々な取り組みは、確実に、従業員や顧客をはじめとするステークホルダーの満足につながっている。


今後の目指す方向性
iPadをはじめとした様々な新しい端末やメディアの登場により、印刷分野のマーケットは小さくなるという見方もある。しかしながら、大川氏は印刷業界の未来を悲観しない。

「印刷が持つ特性は五感に訴えることができるということ。それはデジタルな電子書籍では決してできない。どちらがいい悪いではなく、組み合わせることが大切だと考えている。」

大川印刷はこうした感性に訴えかける印刷の新たな工夫を、日夜考えている。また、会社が社会に対してどのような責任を果たすべきかについて次のように語る。

「CSRという言葉は分かりにくい。いきものや自然環境など、あらゆるものを含む全てのステークホルダーが幸せになる方向を見出すことが大切。」
企業はもともと社会のために存在している。社会に必要とされる「人と企業」であり続けることが、同社の目指す未来である。




取材・執筆 (株)ソシオ エンジン・アソシエイツ 桑原 憂貴



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