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働くことは生きること

日本で初めて有機野菜の生産・流通をビジネスとして成功させた、大地を守る会 代表 藤田和芳氏に聞く!
働くとは。生きるとは。

大地を守る会会長 藤田和芳氏

Part1 企業の利潤追求と社会貢献は、両立できるのか

 

藤田和芳(ふじたかずよし)
大地を守る会会長、株式会社大地を守る会代表取締役社長。

SIJアドバイザー、第2回「ソーシャル・ビジネス・アワード」ソーシャル・ビジネス賞受賞。

 

1947年岩手県生まれ。
1975年に、「農薬の危険性を100万回叫ぶよりも、1本の無農薬の大根を作り、運び、食べることから始めよう」をスローガンに、環境NGO 大地を守る会を設立。
1977年には大地を守る会の流通部門として株式会社大地(現 株式会社大地を守る会)を設立。社会的起業のさきがけとなる。

NGOの活動では、有機農業運動をはじめ、食糧、環境、エネルギー、教育等の諸問題に対しても市民活動を展開。

2003年から行っている「100万人のキャンドルナイト」のイベントでは、省エネルギーや地球温暖化防止を呼びかけ、2005年からは、「フードマイレージ運動」を開始して地産地消によるCO2削減を呼びかけるなど、市民参加による提案型の運動を続けている。

 

――藤田さんは、日本の第一次産業を守ることや環境問題に取り組むなど、社会的使命を持つNGOの代表と、ビジネスとして収益を上げていく株式会社の社長という、二つの顔をお持ちなわけですが、藤田さんの中で、「事業」と「市民運動」とは、どのように位置づけられているのでしょうか。 

藤田   株式会社大地を守る会とNGO大地を守る会は、全く別組織です。NGOは現在、生産者約2,500人、消費者約91,000人、合計約93,500人 の会員を持ち(2009年3月)、一人1000円の会費を集め、それを原資として、有機農法、環境問題に関わる運動などを行っています。
  会員のうち、約2万2千人が株式会社大地を守る会の株主でもあります。その中には生産者も消費者もいますから、会社は、ただ利益を上げるだけではなく、日本の農業を守るとか、環境問題にきちんと関わること、孫の代まで安全な食糧が確保できることなどが求められます。ですから、ビジネス自体が社会的活動になっているわけです。
  NGOの活動も、政府を糾弾したり企業を告発したりという運動をするのではなく、農薬や化学肥料を使わないで、虫が喰ったり形が曲がっている野菜でも、消費者が信頼してそれを買い、食べ続けてくれるという関係ができれば、ちゃんとビジネスとして成り立つのだ、ということを証明して見せて、それを新しいビジネスのモデルとして提案することで、世の中を変えていく、そういう運動を目指しています。
  ですから、大地を守る会にとって、NGOの活動と、株式会社としての活動は、車の両輪のように、密接不可分なのです。


  高い志を掲げても
  生活が破たんしていたのでは評価されない。  

 

  これを人間の生き方に置き換えてみましょう。誰にでも、社会的正義や理想を実現したい、という志があると思います。でも、志がいくら高くても、あるいは志が高すぎるゆえに、家族を十分に養えなかったり、働きすぎて体を壊してしまったり、生活のほうは破たんしている、という人もいますよね。

こういう人は社会的には評価されないし、家族も養えない人間が社会を変えられるのか、というそしりを受けるかも知れない。
  逆に、志などなくて、自分の生活を守ることだけ、金、金、という人もいます。こういう人もやはり社会から評価されないと思うのです。
  志を高く掲げながら、なおかつ生活もきちんとできる。そこにはひとつの妥協があったり、現実を厳しく見る目が必要だったりすると思いますが、私たちの活動も、志とか理念が原理主義に走って、現実の生活から遊離したものになってはいけないし、事業として自立できなくてもいけない。両者を両輪のように回していくことが、われわれらしいやり方なのかなと思っています。

 

  新しいモデルを見せつけることが社会的運動になる

 

――たしかに、誰でも社会のために何かをしたい、という気持ちはあると思いますが、現実的には、それでは儲からないよ、というところで、やむなくもうけ主義に走っているという側面もあるのではないでしょうか。

 

藤田  理念や理想を前面に出していたら会社なんか経営できないよ、カッコいいことを言っても会社がつぶれてしまったらしょうがないじゃないか、と言って、偽装をしたり、小さな嘘をついたり、経営者が不正を働いたりする、ということが往々にして起こって、それが企業の信頼を損なっている。しかし、それは、社会的活動と事業活動は両立できないという思い込みだと思うんですね。
  大地を守る会は、日本の環境問題について、ちゃんと発言したり、無農薬や化学肥料を使わないでもちゃんと農業が成り立つのだ、ということを見せつけたり、そうやってできた農作物を都会の消費者に運んで、ちゃんとビジネスとしても成立している。つまり、理想を実現しながら、ビジネスもちゃんと作っている。こういうことをきちんとモデルとして示して、ああいうやり方ができるんだ、と他の人たちが真似して広めてくれれば、それが一つの社会運動になると思うのです。


 ――次回「Part2 善玉菌を集めることがビジネスにつながる」へつづく

 (取材・文:石井栄子)


4月1日に、大地を守る会の農産物を使ったカフェ「ツチオーネ」が自由が丘(東京都目黒区)にオープンします。ツチオーネとは、安全な大地から生まれた大根「土大根(つちおおね)」から考えた造語。安全な食を求める人や、環境問題に関心のある人たちの情報交換の場を目指しています。子育て中のお母さんたちも気軽に立ち寄れるカフェにしたいと藤田社長。また、大地を守る会で行っている「フードマイレージ運動」の、CO2削減量を表す単位「ポコ」をポイント化し、カフェで使えるようにすることも検討中とか。ぜひ一度立ち寄ってみてください!
 
 


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